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「詩織、詩織……」
何故、こんな事になっているのだろう。
「詩織……」
ちょっとした用があり、仕事帰りに実家に寄って、自宅のアパートに少し遅く帰ると。
「……詩織、詩織」
電気もつけず、薄暗い部屋の中。
「詩お……り」
愛する妻が……。
「詩織いいいいぃぃぃぃ!」
死んでいた。
「ぁ……ぁあ……」
一体何をされたのか、見当もつかない。
「詩織……詩織……」
それ程までに、妻の体はズタズタに引き裂かれ、
「なんで……どうして……」
バラバラに解体されていた。
それは、いつもの様に抱きしめるだけで、簡単に崩れ落ちてしまいそうな程で。
「詩織ぃ……」
その体をそっと抱き上げると、案の定、くちゅ、とネバついた音が鳴り、ズルズルと中身が滑り落ちていく。
「あぁ……あぁ」
慌てて腕の中に残ったわずかな『物』を、それ以上零れ落ちてしまわない様に、ギュッと抱きしめる。
「う……ぁ……」
朝、腕の中の彼女に手渡された水色のワイシャツが、ジワリと赤い色に染まる感触を味わいながら。
「詩織ぃ……!」
『妻だった物』を、ただひたすらに抱きしめ続けた。
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