レプリカ

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はっとした。僕は一体何をしたんだろう。 自分の手にはべったりと乾き始めた血が付いて、独特の生臭い匂いをさせていた。 ごくりと喉がなる。 僕は僕のしでかしたことを確認しなくてはならない、後ろを振り返って。 小さな呻き声がした。 それは僕が耳にした事のある声だった。 振り返ると、白いワンピースが目に入る。 嘘だ……。 白いワンピースは彼女自身の血で真っ赤に染まり、足の指には血と同じくらい真っ赤なペディキュアが塗られていた。 そんな、どうして。 ――――それは僕の愛した彼女だった。いや、今だって愛している。こんなに心に穴をあけるほどに。 彼女はレプリカのように青ざめた生気のない白い顔で僕に微笑んだ。 「最後の一つを渡してしまったら、きっともう私の事を忘れてしまうと思ったの。 いつも私の事を思って永遠に忘れないでいて欲しかった……」 彼女は真っ青になった唇を震わせながら消え入りそうな声で言う。 僕の頬に触れた彼女の手に付いた血と僕の涙が混じり合い、彼女の白い服に赤い水玉を作る。 「これでもうあなたに忘れられることを怖れなくていいのね。私が完全に消えてしまうまで私の事を忘れないで」 彼女はそう言うと僕の腕の中で静かに目を閉じた。 僕に彼女のレプリカを遺して。
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