第1章

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『ねぇ、蓮さん。一晩中腕枕してて、痛くならない?』 『全然』 あの時、俺は平気な顔でそう答えた。 それは俺の強がりであり弱さでもある。 確かに一晩中、腕枕をしていても腕が痛くなることはない。 軽い痺れを感じるぐらい。 でも、俺にとって自分の腕が痺れることはたいした問題じゃない。 俺が何よりも恐れるのは、寝ている間に美桜がいなくなってしまうことだけだ。 それは、美桜と住み始めた時から感じていること。 心から求めた美桜を手に入れた俺はその瞬間から、今度は手離す恐怖を覚えるようになった。 だから俺は腕枕をすることで美桜の存在を確認する。 そんな俺にとって目覚めた時に感じる腕の痺れ安心感を覚える。 その痺れは俺に安心感をもたらす。 耳を澄ませば美桜の寝息と窓の外からは小鳥のさえずりが聞こえる。 左半身には美桜の温もりも感じる。 俺は美桜を起こさないように細心の注意を払いながら、頭だけを動かす。 眠る美桜の寝顔は見惚れてしまうくらいに美しい。 透けるように白い肌。
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