第2章

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フードを被ったまま、来た道を戻っていた。 後ろではざわめく大勢の人の声が聞こえる。 懐かしい気配が転移してきたのを背中で感じながら、どんどんと歩みを進めていた。 「シオン様…」 リュウが心配そうに後ろをついてきている。笑って返した。 「いつまでも陰気くさいと、晩御飯はカレーライスにするぞ。」 「シ、シオンたまああああ!!!」 ボンッという音と共に、小さなドラゴンになったリュウは、ボロボロと目に涙を溜めて俺に抱き付いてきた。 「大好きでしゅ!!シオンたま大好きでしゅ!!!うわあああああん!!!!!」 小さな子供をあやすように背中をさする。 「はいはい、じゃあ今日はカレーライスだな。だから泣くな、ほれ。」 きゅ、といって必死に涙を止めるリュウ。小声で何か言ってるのでこっそり聞くと、 「泣いちゃだめ、シオンたまが嫌、だめえ、なっかな、いヒック。 泣かないんだ、なヒック…う……」 とかずっと言っている。 久しぶりに動いた気持ちに、リュウも気がついていたのだろう。トントンとリズムをとって頭をなでていると、いつの間にか腕の中で寝息をたてていた。 「カレーライス…。」 幸せそうに微笑んでいる。夢の中で食べているのか。 「…足りないのは、にんじんだな。」 リュウに消音結界を張り、市場へと足を運んだ。
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