第3章

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「行くぞ。」 黒のローブを羽織り、リュウには白のローブを渡した。 「それを着ていくぞ。 姿を見られても厄介だからな。」 「承知いたしました。」 足に力を入れ、飛ぶように走る。 「あいつの行動を確認する。」 「承知いたしました。」 音も無く、その現場へと辿り着く。 少年は封印を解いてない状態で結界を張った為か、肩で息をしており辛そうだった。 「あの少年…なぜ、封印を解かないのでしょうか。」 「魔力封印したまま、結界維持なんて無茶苦茶だよな。」 「昔、その無茶を、普通になさっていたのは、どなたでしたか…。」 リュウの発言に苦笑しつつ、少年の奥に鳥のような頭で、洞窟を覆い尽くすほど大きな体を携えた魔物を見つめた。 「完成、するぞ。」 ついに魔物が動き出す。 少年は剣を使い、隙を与えずに攻撃しており、有効打にはなっていないものの、とても戦闘になれているのか、謎の安定感があった。 先ほどから、何度か右腕を左手で触る仕草を見せているのが、気になる。 そして、右腕をかばうような少しばかりの隙を、魔物は見逃さなかった。 魔物の巨大な体は俊敏に動き、少年へと突進をする。 少年は受身をとったが、体は吹き飛ばされて洞窟の壁へのめり込んだ。 「がっ…っくッ…」 ゆっくりと立ち上がった少年に大した傷はないように見える。 実際、そんな深手は負っていないだろう。 なのに、魔物と向き合う少年の表情は険しい。 「壊れたな。」 少年が走り出したと同時に影から出て、魔物へと向かう。少年より先に魔物の頭に手を触れ、唱えた。 「残酷な時計-リワインド-」 洞窟に優しい風が吹き、魔物の足元には時計によく似た魔方陣が浮かぶ。 光が強くなって魔物の姿がだんだんと見えなくなり、最後は消えた。 少し距離をとって着地をすると、念話でリュウが話しかけてくる。 〈壊れたとは…?〉 こちらを睨みつけたまま、戦闘態勢を崩さない少年を見据える。 〈あいつが付けてる封印具。 どうも庇った衝撃で壊れたらしいが、俺、そんなに緩く作った覚えないから気になって。〉 キイイイン リュウが俺に向かってきた剣を跳ね返す。 飛び退き、再び構えた少年の凛とした声が響く。 「貴方たちは何者ですか?」
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