第3章

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口に出そうとした名前に、頭を殴られたようだった。鈍く、頭に響く。 何者かーーーー 「ここは学園の所有地で、結界が張られています。 一般人が訪れることは出来ないはずです。」 上をちらりと見上げる。 遠くからの転移の気配を感じた。 それも随分と、懐かしい気配ばかりだった。 シュン 少年を取り囲むようにして、立つ人影は5人。 顔は見えないが、黒いローブに色のラインが入っている。 赤、青、黄、緑、紫。 少しだけ気配は変わっているけれど、それでも間違えるはずはない。 「5皇帝…。」 かつてはよく口に出したその名、もう大きな声で呼ぶことはない。 魔界の切れ目、魔物の異常な変化、仲間を呼ぶための結界、か。 となると、ギルドからの連絡で、教師たちはもう動かないはずだ。 そしてジワリジワリと、5皇帝が俺たちを囲むようにして近づいてきた。 それでも、鈍ったままの思考回路で考えていた。 自分は何者か―――― それは旅をしている間にも、幾度となく突きつけられたものだった。 ふと考えたことがあった。 今とは違う立場で支えられたら――― 訪れた先々に、輝かしい名だけでは救えない人が、見飽きるほどいた。 幾つもの制限が、目の前の悲しみをただ、傍観させるように壁を作った。 鈍っていた思考がゆっくりと冴え始まる。 ――――答え、を見つけたのかもしれない。 <リュウ。世界が敵になっても俺の傍を望むか?> <渇望します。> ははっと声を漏らした。 予想はしていたが、あまりに迷いのない返事に 聞いたこちらがバカだったような、そんな気さえした。 もう戻れない一歩を踏み出す。 ああ、世界は敵に回したくないな。 だからとりあえず、 「はじめまして、こんにちは…?俺は、通りすがりです…」
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