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口に出そうとした名前に、頭を殴られたようだった。鈍く、頭に響く。
何者かーーーー
「ここは学園の所有地で、結界が張られています。
一般人が訪れることは出来ないはずです。」
上をちらりと見上げる。
遠くからの転移の気配を感じた。
それも随分と、懐かしい気配ばかりだった。
シュン
少年を取り囲むようにして、立つ人影は5人。
顔は見えないが、黒いローブに色のラインが入っている。
赤、青、黄、緑、紫。
少しだけ気配は変わっているけれど、それでも間違えるはずはない。
「5皇帝…。」
かつてはよく口に出したその名、もう大きな声で呼ぶことはない。
魔界の切れ目、魔物の異常な変化、仲間を呼ぶための結界、か。
となると、ギルドからの連絡で、教師たちはもう動かないはずだ。
そしてジワリジワリと、5皇帝が俺たちを囲むようにして近づいてきた。
それでも、鈍ったままの思考回路で考えていた。
自分は何者か――――
それは旅をしている間にも、幾度となく突きつけられたものだった。
ふと考えたことがあった。
今とは違う立場で支えられたら―――
訪れた先々に、輝かしい名だけでは救えない人が、見飽きるほどいた。
幾つもの制限が、目の前の悲しみをただ、傍観させるように壁を作った。
鈍っていた思考がゆっくりと冴え始まる。
――――答え、を見つけたのかもしれない。
<リュウ。世界が敵になっても俺の傍を望むか?>
<渇望します。>
ははっと声を漏らした。
予想はしていたが、あまりに迷いのない返事に
聞いたこちらがバカだったような、そんな気さえした。
もう戻れない一歩を踏み出す。
ああ、世界は敵に回したくないな。
だからとりあえず、
「はじめまして、こんにちは…?俺は、通りすがりです…」
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