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洞窟内は以前として、緊迫した空気が漂っていた。
正体不明の人物が、5皇帝を前にして、全く動じない。
気味が悪いはずだ。
キィィィィィン
切り込んできたのは、雷帝ライ・アジャック。
素早い動きが得意でー…おっと。
残像を残して動く光に目を向ける。
正体は蛇のような形をとった雷。
自在に動き回り、ライの魔力が尽きるまで命令通りに動く。
使い魔に非常に近い、魔力の塊だ。
違うのは、ライが意識を失っても動き続ける点。
以前はこんなに早く動かせていなかった。
成長したな。
「加勢するわよ。」
炎帝の一声で、水帝と風帝が動き出す。
闇帝は依然として少年の前を動かない。
<シオン様、残念ですが…>
こんな形となってしまったが、久々の手合わせだった。
もう少しやっていたかったな。
<分かった。>
ライの蛇をナイフで相殺し、彼女の背後へ回り込み、意識を刈り取った。
崩れ落ちるライの体を風で支え、治癒をかけつつ少年の背後へと転移する。
迎えたその着地点の景色に、
思わず、にやけてしまった。
俺の額の位置に、少年が人差し指を向けていたのだ。
「初級魔法の光の矢、僕が放てば、ただでは済みません。
動かないでください。」
思わず漏れた笑い声が、大きく響く。
「ははッ!」
微かに体を揺らすと、頭のすぐ横に魔法が飛んできた。
後ろを見ると、すぐ後ろの洞窟の壁に穴が開いている。
でも、岩が崩れる音はしなかった。ほう。
<リュウ、俺もしかして相当レアな子を相手にしてる?>
<いえ、少年の方が、レアな方を相手にしていると思います。>
おいおい、コレより珍しい俺って何なの…。
<あー、ありがとう?>
リュウにお礼を言ってから少年を見据える。
相変わらず人差し指をこちらに向けていた。
「答えてください、貴方たちは何者ですか。」
その言葉が放たれると同時に、少年の背後で様々な色の魔力が具現化された。
その全てが拘束魔法なことに、異論は無い。
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