第5章

3/4

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
人であったものを跨いで、先へ進む。 「すごい数だ。」 一体幾つの人生を跨いだことか。 古びた民家を横目に、最奥を目指して歩く。 立ち並んでいた民家が途絶えて、一本道へと続いていた。 少し進むと、そこには他よりも少しだけ大きな民家が、中央に建っている。 生き物の気配は、無い。 ただの木で出来たボロボロの扉が薄く開いていた。 「シオン様…。」 リュウに呼ばれ、中へ入ってみると、がらんとした広い空間。 床は所々物を置いてあったような形跡があり、誰かが生活していたのが分かる。 かつてあったものは全て、奪われてしまったのだろう。 そして唯一、左奥に小さな扉。 屈まないと通れないサイズのもので、この家の一部とは思えないほど、ここだけが頑丈に作られている。 手で押してみる。 ギィ、と音をあげてゆっくりと扉が開いた。 中に入ると、天井が低くて狭い、椅子が一つあるだけの空間。 「…遅くなって、すまない。」 首を垂れて跪く。 そこには滅多打ちにされボロホロになった、この村の長老が、吊るされていた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加