第2章

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転移した先は、校長室の扉の前。これから、校長に転入の挨拶をするのだ。 ノックをしてから木製の扉を開く。 「失礼します。」 お辞儀をして顔を上げると、深い緑を基調とした部屋がそこにあった。 「ホホホ、ようこそ。」 部屋の中央に大きな机と椅子が置いてあり、そこに座る人物に懐かしさを覚える。ああ、変わっていない。白髪に優しそうな笑顔、柔らかい物腰。 「ワシはこの学園の校長、トム・アースじゃよ。」 ギルドネーム森の番人。 Sランクを越えた人物に与えられる通称で、先代の5皇帝の1人。 珍しい植物属性と相性の良い大地属性の2つ持ちで、かつて拘束系の技で最強と呼ばれていた。 引退後、世界トップの学園を創り上げた人物でもある。 「はじめまして。シオン・バトラーです。」 「うむ、話は聞いておるよ。この時期に転入は珍しいからの。」 「そうですよね。クラスで浮いてしまわないか、少し心配です。」 「心配は無用じゃ。転入者自体は少なくないからの。安心して学ぶと良いぞ。」 「ありがとうございます。」 「はて。後ろのお方はどの様なご関係かな?」 「あっ、すみません。ご紹介が遅れました。執事のリュウです。」 そう言い終えた直後、リュウが俺の前に立ちはだかりーー低く、唸る。 「……貴様、何の真似だ…?」 まずい、校長が使った探知の魔法がリュウの警戒心を逆撫でてしまった。 「…リュウ…!」 慌てていると校長がピシャリと言い放った。 「…人間では、ないようじゃが?」 ーー――ククククク 部屋の温度が一気に下がり、リュウがとても冷たく笑っている。校長を見ると汗が額を伝っており、あまり良いとは言い難い状況だ。 「…リュウ、大丈夫だよ。」 こちらを見て、威圧を止めたリュウの前に出る。 「すみません。まだ人に慣れていなくて…。」 「人に慣れていない…とな?」 ケッ、物分かりが悪いな、と言いながら、リュウが付け加える。 「人間界で言う“使い魔”というやつだ。」 驚きに目を見張る校長。
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