宵闇

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それから、いくらか眠ったのでしょうか ほんの2、3分かもしれませんし1時間くらい眠ったのかもしれません 自然と閉じてしまった目がこれまた自然に開いて、ぼんやりとしたまま周りを見るともなく見ました 仲間は時折私を気にかけるモノの、私が眠っているのを確かめるとすぐに釣りに没頭しております 釣果はそこそこあるようで、船内には絶えず笑い声が聞こえ、私も船酔いでひどい状態ではあるけれども、この企画の成功に満足感を覚えておりました 満足感を覚えると逆に、寝てしまう前に見た手の事を思い出して、少し不安になりましたので周りを見渡します 手はまだそこに居て、手に持った小さな柄杓で船に海水を入れておりました もちろん、現代の船ですし、一本の手に持った小さな柄杓一つで船を沈められるほどの水を入れられる訳がありませんし、柄杓がヒタヒタと海水を入れている部分は普段、海が少し荒れている時なら波を被る部分で肝心のエンジンルームや船室などはしっかりと守られております その手は次第に友人達にも柄杓の水を掛けるようになりました もちろん、溺れるような量でもなく、掛け方も乱暴な感じはなくそうっと まるで墓石に水を掛けるような仕草でもって、友人達に柄杓の水を掛けていきます
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