ワスレルベカラズ

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 大人のヒトが、弟さんに。  話しかけた。  不自然に空いた引き戸の奥から。  何か、熱い空気と。  なにか、いい香りがして。  いつもの、豆腐みたいな。  美味しい香り。  豆腐屋のオジサンは、  たまにボクを奥に上げて  くれていたし。  ボクは、小走りで。  その引き戸を開けた。    引き戸の奥の先。  湯煙の方に向かうと。    酷く濁った湯船の中に。    何かが、浮かんでいた。  まるで。  湯豆腐、みたいに。    けれど、ほんのり赤い破片が浮かぶ。
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