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「灯真様!」
「っ…!!」
怒鳴り声で目が覚めた灯真は縁側から飛び起きた、まだ覚醒していない頭を掻きながら辺りを見渡せば大男が見下ろしていた。声の主だ。脳を覚醒させるように目を瞬かせると、灯真は立ち上がり腕を上へ伸ばし、体を引っ張るようにする。
はたりと腕を下ろせば起こした男を見た。
「仕事か?」
「優真(ゆうま)様が明日の総触れには必ず出ろと…」
「だる…、でも阿兄様からそう言われると…なにかあるのか?」
「世継ぎを作れ、とかじゃ?」
男は畏まった口調から砕けた素の口調に変わった。灯真との暗黙の了解で付き合いが長く二人の時は素の自分を出す、ということになっている。
「そういえば最近長局向に生要(いよう)や阿兄様が入って行くのを見たな…」
「生要から少しばかり聞いたんだけど、大奥の防衛や反乱に対抗するための武装衆を作ってるとかなんとか」
「武装衆…大奥の防衛ってのは多分魔からだろうな、鬼や妖が最近山から下りて来てるらしいからな…反乱がわからんな」
「魔に憑かれた民衆の反乱…とか」
「死要、そこらへんはお前に任せる、阿兄様は御殿向か?」
「優真様はすでに御起床ですよ、灯真様」
死要と顔が同じに見えるこれまた大男が後ろから来た。
死要の双子の兄、生要だ。2人の見分けは黒子の位置、死要は口元にあり生要は目元にある。
生要からそれを聞けば灯真は御殿向へ向かった。
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