二章

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駅で前橋と別れた佐川は家に帰るべく電車に乗り込んだ。 事件のことを思い浮かべながら窓の外を眺めていると 「勇悟、 久しぶりね。 元気してた?」と声をかけられ振り向くと吉川千秋がいた。 「部活してないあなたがこんな時間まで何してたの?」 勇悟が言葉を紡ぎ出す前に千秋は重ねてこう尋ねた。 「どうもこうもねえよ。 雪絵に言っておいてくれ!余計なことを言うなって。 」 即座にそう答えた後にいろいろと大変な目にあっているとかブツブツひとしきり文句を言い初めた。 「文句を言いながらも手助けしてあげるんでしょ?勇悟は優しいからねえ。 」 とからかうような口調で言う。 「だけど、 お前のこと…傷つけた…俺が…」 千秋は人差し指で勇悟の口を塞いで言葉を止める。 そして、 にっこり笑いながら電車から降りていった。
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