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優が顔をあげて俺を見た。いつもの勝気な瞳に陰がある。
どうした?と聞こうとしたところで
「お前ら急げー。バスもう出るぞー」
兄貴が送迎バスの窓から顔を出して叫んだ。
一つ上の兄貴は、あまり兄って感じがしない。
どちらかというと兄弟というより友達に近い。
だけどそこに優が入ると、その関係は微妙だ。
たまに優しい目で優を見ていたりして、優も兄貴には妙に素直で、少し、いやホントにほんの少しなんだけど、いらつくような不安なような気分になる。
「福岡のばーか」
けらけら笑いながら優が走り出す。
その顔に先ほどの陰りはなくて、俺はほっとする。
「はっふざけんな」
言いつつ慌てて俺も後を追う。
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