カセットテープの告白 sideA

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思考がネガティブになっていく。原因は考えたくなかった。 考えなくてもわかりきっていた。 これからつきあいはじめるだろう彼らの横で、どんな顔をしていればいいのだろう。 そもそも俺にできるのか、自分が邪魔だと知ったからといって、身を引くなど。 思いのままに生きてきた。 今思えば、多分、あいつは、兄貴は、何度も我慢してきたんだろう。わがままでガキな弟と、優しくて大人な兄。 俺が優でも、あいつを選ぶよ。 聴こえてくるのは、片想いの歌。失恋の歌。 バスの椅子にもたれかかって ぎゅっと目を閉じた。 カセットテープのしゃーっという音だけが、聴こえていた。
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