~彼女の想い~

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今日も暑くなるとラジオの天気予報が伝えていた。 開店前、店の外を掃除している時に空を見上げれば、真っ青な空に一筋の飛行機雲。 いかにも夏空な感じに「絵ハガキみたい」と指でファインダーを作ってみる。 そういえば、と自分の行動で思い出した。 (家の押し入れに古いカメラが沢山あったっけ……) 店の裏に建つ家はお祖父ちゃんの住んでいた家。家の庭と店の裏口は垣根で区切っただけで土地自体は繋がっていて、店と家を両方継いだ私は現在はその裏の家に引っ越してきて住んでいる。 家じゅうのあちこちにアンティークがあるあの家は、どっかを開ければ何かが出てくるという……まさにビックリ箱の様な家だった。 遺品整理がなかなか進まないのもそこに原因がある。わんさか出てくるアンティークを、手離す手離さないと仕分けるのは結構大変で……。 「あれって使えるものなのかな。どうしたらいいか、今度要子さんと相談しよう」 気に入ったものがあったら店に置こうかな。 それとも、使えそうならこんな綺麗な空を写すのも良いかもしれない。 お祖父ちゃんの遺した宝物と暮らすのは、今の私の楽しみでもあり、癒しでもあった。 小さな店と古い家は、私の大切な大切な場所だ――。  
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