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脳内で響いた声は、願いの振りをした呪いだ。いつまでも私を追いまわし、そして追い詰める。
逃げたくて。
逃げられなくて。
「……もう、やだ……」
消えた文字を取り戻す為に、私はペンを動かした。
彼の名前を幾度も書いた。
涙を拭いながら、何度も。何度も。
滲む文字と、水分を含んでくしゃくしゃになっていく紙。青のインクに染まったページは、悲し過ぎる。
私はそこを破り捨てた。
「わからないよ……。どうしたらいいの……」
たすけてほしい。
だれか。
机に伏して、すがる気持ちで声を絞り出す。
頭の中に現れたのは、優しく笑う二宮さんだった……。
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