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数度呼ばれたのかもしれない。彼女の声がより大きくなった事で、ハッと我に返る。
『麻衣?大丈夫なの?』
「……ごめんなさい。大丈夫」
『本当に?』
「うん。大丈夫だから。手帳、明日持って行くね」
要子さんは、私の返答を疑っている様な声音で何度も平気かと尋ねてきた。
彼女は昔から勘が鋭くて、相手の些細な変化などもすぐ気づいてしまう。きっと私の今の様子も、分かっているに違いない……。
曖昧な態度で「大丈夫」「平気だから」と同じ言葉を繰り返し、私は逃げる様に電話を切った。
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