~彼女の想い~

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部屋に静寂が訪れ、ランプの明かりが白い小さな四角を照らす。 箱を開けようと思ったけど、自分の指が微かに震えているのに気付き……止めた。引き出しを閉め再び日記帳に向かう。 数日前の日記には、喜びの感情が単語で並んでいた。 嬉しい、楽しみ、そんな字が……。 一番下にある二宮さんの名前を指でなぞると、胸の奥が熱くなる。忘れる様努力していた気持ちが、燻っているみたいに。 《忘れないで、麻衣。ずっと忘れないで》 その時聞こえたのは、忘れる事が出来ないでいる過去の人の声。脳内に響く声は、今まで何度私を苦しめてきただろう……。 今日もまた例外なく、その声は私を苦しめる。 「………さ、ん…」 名前を呼んだその人に、私は救いを求めたのだろうか? 堪らず口を開いたら、何故か罫線のノートに雫が落ちた。 意思に反し目からぱたぱたと落ちる水は、大事な文字を滲ませていく。 「……二宮さん……」 形無くなり、青いインクのみずたまりだけになった文字。存在を確かめる様に私は呟いていた。  
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