第1章

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 「薫、手と頭大丈夫?」  頭大丈夫、って言うと、なんだか相当馬鹿になったような気分だ。  「はい。大丈夫です」  何気なく答えると、大爆笑されてしまった。  「敬語なんて使わないでよ。わたしは三木楓。大学1年生のあなたの姉。ほら、普通に話しなさい」  姉だ、といわれても、記憶がないのだから実感が湧かない。  だけど、ここは普通にしていた方がよさそうだ。  「うん…ありがとう」  そう言うと、あたしの姉であるその人は、ニッコリとほほ笑んだ。  「自分のこともわからないんだよね?」  「うん」  あたしの名前はきっと薫、で、姉の名字が三木なら、きっとわたしは三木薫、という名前なんだろうけど。  見当がつくのはそれくらいのものだ。  「あなたは、三木薫、高校1年生。10月16日生まれだから、まだ15歳。あ、ちなみに今は5月ね」  やっぱり、三木薫、があたしの名前か。  高校1年生なんだ。  その2つの情報も、とても有難い。  けれど、やっぱり一番気になるのは。  「ねぇ、あたし、事故に遭ったの?」  自分がこんなになった理由。
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