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「ふう…やっと終わったよ」
フィオが小さく呟く。
「りょ…う」
蓮の声がかすかに聞こえる。
フィオはいつの間にか居なくなっていた。
「…殺さない…のか…」
誰にともなく呟いた。
刻印者が能力者よりも身体的に強いのは知っていたがまさかここまでとは思わなかった。
(動けるか?速水)
(テレパシーか…声出すの辛かったから助かるな。)
(大丈夫か?見たところ骨が折れてるんじゃないか?)
(いや、骨は無事だが…動けそうにはないかな…)
(はは…私もだ…もう、終わりなのか?)
(さあ…な)
しばらく無言の状態が続く。
(どうやら死神のご登場らしいぞ、速水…)
蓮が何かの気配を感じて言った。
俺にもはっきりと感じ取れるような嫌な気配だ。
「シャー…シャー…」
というおよそ人間と思えないような声…
多分、刻印に呑まれた刻印者、とやらだろう…
(出来る限り楽に殺してくれることを祈るか…)
(速水…)
蓮が最後に何かを言おうとした時…壁を突き抜け「それ」がやって来た。
刻印者…ではないな。
身体が大きいし多分人間じゃない。サソリっぽいな。
そのうえ手に大きなハサミがある…
(リーパー…だと…?)
蓮が信じられないものを見たかのように言った。
(知ってるのか?)
(あぁ。前回の戦争の時に突如現れ、大量の能力者を屠り、その後また突然姿を消したと言われている刻印魔獣だ…)
「シャー!」
うん、確かに人を食いそうだ。
(バイバイだな、蓮。)
(しばしの別れだ。あの世があればすぐまた会えるさ。)
蓮がかすかに笑った気がした。
蓮のテレパシーのお陰だ。
最期まで俺達は繋がっていられた。
そんな俺たちに向かってリーパーがでっかいハサミを振り下ろした…
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