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「……」
「……」
「……」
三人分の沈黙が空気を覆う。
何とも言えない表情の蓮と何も言えない俺。そしてニコニコしてる姫川さん。
「……出来れば何か言ってくれないかな?」
姫川さんが笑顔のまま少し申し訳なさそうに言った。
いや…何を言えと?
「本気で言ってるんですか?」
「すみません冗談です。」
真剣な目つきの蓮に一瞬ビクッとなった姫川さんが素直に頭を下げた。
「じゃあ二人とも頑張ってね!」
ちょっ!
「ちょっと待ってください!」
「え、まだ何かある?」
いや、何も説明してないですよね?
「あはは、冗談冗談!じゃ、質問ターイム!」
…姫川さん楽しそうだな。
「まず、ここはどこですか?」
「ここはさっきも少しだけ言ったけど、私達の世界のパラレルワールドだね。君達はいまこっちの世界の君達の身体を乗っ取っているんだ」
「じゃあこの腕輪は?」
「薄々気づいているくせに~。私達の世界と、この世界を結ぶアイテムさ。さっきのようにコネクションって唱えると行き来できるね。
あ、でも君達の腕輪はこっちの世界の方をメインワールドで設定してるから自分達の世界には長くいられないな。」
姫川さんが一人うんうん、と頷く。
ピシィ…
俺達の前に急に亀裂のような物が見えた。
「あー…もう見つかったか。」
「何ですか?これ…」
「うん。刻印者がこっちの世界に干渉しようとしてるみたいだね」
「刻印者だと!?」
蓮が叫ぶ。
生徒の視線が集まる。
「…シーッ!」
「す、すまない…」
「じゃあ説明するけど、この腕輪は二つの世界の関係を強める物だから、これをつけてると刻印者に見つかりやすくなるんだよね。
そして刻印者も多少の干渉はしてくるようになる。」
「それって全然平和じゃないじゃないですか!」
「ダイジョブダイジョブ~外してたら刻印者は干渉出来なくなるからさ。
ま、あんまりずっと外してるとこっちの世界と君達が同化するらしいんだけど…難しいことは分からないんだよね~」
つまり絶対外さなくてはいけない時以外はつけてろって事ね。
「さ、じゃ説明はこの辺にしてあの刻印者、追い払うよ。」
『コネクション』
周りの世界の時が少しだけ止まる。
そして俺達は自分達の世界に入った。
「さ、着いたね。」
姫川さんが腕を軽く回す。
「刻印者はどこかなぁ~?」
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