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「あ、いたいた~」
姫川さんが微笑む。
廊下の先には二人の刻印者。
「なんだと…?」
「あれはトランプのクイーン…!」
クイーン?トランプ?
というか普通に喋るんだな。
「ありゃ?君達、私のこと知ってるんだね。」
「……」
「……」
刻印者二人が姫川さんに見られて震え出す。
「に、逃げるぞ…!
「あぁ!」
「逃げるの~?」
刻印者が慌てて後ろを向いて走り出そうとした。だが前に進まない。
「逃がすわけ、ないよね。」
クイッと指を曲げると二人の周りを銀の風が吹き乱れ、刻印者がバラバラに…
……ん?
いや、なんだこの人……
「あー結局私一人でやっちゃったな…。ごめんね二人とも~」
いや、別に俺達は戦いたいわけじゃないんだけどな…
じゃ、帰ろっか。という姫川さんの言葉に従い俺達は再びパラレルワールドに戻った。
「まぁこんなところだね。今向こうは刻印者達の無法地帯になっててね。君達のような善良な能力者はこっちに逃がしてるんだ。
でもこっちも平和ってわけじゃない。
もしどうしても嫌になったらその腕輪を破壊したら良い。君達はこっちの世界の住民として生きられるよ。」
姫川さんがフフッと笑った。
「さ、質問はもうないかな?これ以上は自分達で確かめた方がいいと思うしね。」
そうだな…あらかた聞いた気がする。あ、そうだ。
「さっき刻印者が言ってたトランプ、とかクイーンってなんですか?」
「あー…それはね。」
姫川さんが考えるように額に手を当てた。
そしてイタズラっ子っぽく笑った。
「ヒミツ、かな?」
「じゃあ私は行くね。」
姫川さんがクルッと踵を返した。
「ま、待ってください。」
蓮が突如声を上げる。
「どうしたんだい?」
「私達を助けた時、他に誰かいませんでしたか?」
「え?誰もいなかったけど…リーパー以外は。あの学校では君達が最後の生き残りだったんだよ。」
そうか、涼の事か。
あいつは生き残れなかったのか…
滝口達は生き残ったのか?
「そう…ですか。」
「君達も色々あるんだろうけど、希望を捨てずに頑張りなね?」
姫川さんは手を降るとそのまま高3のフロアに帰って行った。
そうか。
パラレルワールドに来たんだな。
戦いから逃れられたわけじゃない。
あれが全部嘘だったわけじゃない。
でも…まだ希望が潰えたわけじゃないんだな。
俺たちも…希望を捨てずにやれることをやらないとな!
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