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「どうだ、204番室に入っている男は?」
『院長、それが……相変わらずなんです。』
「やはりまだ、落ち着かないのか?」
『ええ……クスリをよこせと喚き散らしてます。』
「相当の期間、使っていたらしいからな。」
『それだけ中毒になってたんでしょうね。』
「ふむ……。全く、人は弱い生き物だな。」
『…………。』
「症状は極端な食欲増減、肝臓の肥大と出血、血管壁の破壊、」
『…………。』
「異常な寒気と発汗、脈拍上昇、脳の萎縮、幻覚幻聴だ。」
『…………。』
「そんな毒を、どうして人は受け入れてしまうのだろうね。」
『……院長……きっとそれは、魔法なんですよ。』
「うん?」
『世界を魅了してしまう、魔法。』
「…………。」
『弱い人間は、その魔法に心奪われてしまうんです。』
「…………。」
『そして魔法は、人を甘美な死地に追いやるんです。』
「…………魔法、か。非科学的だが、的を射ている。」
『恐ろしいですね。』
「ああ、恐ろしいさ……覚醒剤なんて……。」
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