世界を変える魔法使い

10/10
前へ
/10ページ
次へ
―――――――――― 「どうだ、204番室に入っている男は?」 『院長、それが……相変わらずなんです。』 「やはりまだ、落ち着かないのか?」 『ええ……クスリをよこせと喚き散らしてます。』 「相当の期間、使っていたらしいからな。」 『それだけ中毒になってたんでしょうね。』 「ふむ……。全く、人は弱い生き物だな。」 『…………。』 「症状は極端な食欲増減、肝臓の肥大と出血、血管壁の破壊、」 『…………。』 「異常な寒気と発汗、脈拍上昇、脳の萎縮、幻覚幻聴だ。」 『…………。』 「そんな毒を、どうして人は受け入れてしまうのだろうね。」 『……院長……きっとそれは、魔法なんですよ。』 「うん?」 『世界を魅了してしまう、魔法。』 「…………。」 『弱い人間は、その魔法に心奪われてしまうんです。』 「…………。」 『そして魔法は、人を甘美な死地に追いやるんです。』 「…………魔法、か。非科学的だが、的を射ている。」 『恐ろしいですね。』 「ああ、恐ろしいさ……覚醒剤なんて……。」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加