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(高野志貴side、主人公視点でお送りします)
人生に必要なのは物語性だと、オレの初恋の君は言っていた。
「…………良し、」
赤縁の洒落た伊達眼鏡をひっかけて、伸びっぱなしの前髪を赤いピンで抑える。
オッドアイは片目にカラーコンタクトを入れて誤魔化しておこう。
眼鏡とピンに赤を選んだのは、自分でもゾンビかと思う顔色を誤魔化そうと悪足掻きしたからだ。むしろ強調されてないですかこれ。ちゃんとオレは人類に見える、……よね。……いや、まあ、自信がない訳じゃないけどさ?
楽しみ過ぎて。王道学園の生活が楽しみ過ぎて、ちょっと完徹しちゃっただけですから、うん。
「にしたっていつ見てもオレったらゾンビ」
いやま、顔は中の上でしょうよ。顔色だよ。
ため息をついて、鏡から離れ、部屋を出る。
流石というべきか呆れるべきか、基本的に二人一部屋であるこの寮は、その中にさらに個室が二つ、共同スペースであるリビング、キッチンに風呂トイレという、しかも無駄に豪華という、あれなんか俺の知ってる寮と違う。……金持ちめ。
リビングには備え付けの家具だけがそのままの状態。人はいない。
オレは一人部屋である。実家と違って騒ぐ姉さんもいないからちょっと物足りないには物足りないけど、ここで「寂しい……」と呟くほどの可愛げある性格はしていない。
それに、
ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽ((ry
……立派な通い妻(幼馴染)がいる。何を思って朝っぱらからチャイム連打していらっしゃるんだ千歳さん! こえええよ!! チャイム壊れるし普通に近所迷惑だよ!!
「うるせえええ、千歳さんうるせーっ!」
ガチャリ(←オレが扉を開けた音)。
「志貴、おはよ」
スタスタ(←人の部屋に無許可で上がり込む音)。
「いや……うん…………、千歳さん、何用」
「朝飯作りに来た。腹減っただろ」
お母さんか!
「うん、サンキュ」
勿論、自炊スキルlevel0のオレは有り難く甘えるけども。
誰だいまダメ人間って言った奴。
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