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心臓が破裂しそうなくらいバクバクと動く。
引き寄せられる力は衰えなくて、私は椅子から腰を少し上げた状態になった。
バランスを崩しそうになって手を着くと、ピアノがバーンと音を鳴らした。
「ーーっ!」
橘修二が驚いて私の手を離したので、腰がすとんと椅子に戻る。
「ご、ごめん!舞子ちゃん大丈夫!?」
「うん…大丈夫だけど…………修二くんの方こそ大丈夫?」
「いやっ、俺は、大丈……大丈夫じゃないかも」
頭を抱える橘修二は本当に大丈夫そうではない。
どこか様子もおかしいし、抱える頭からチラリと覗く耳が真っ赤なので体調が悪いのかもしれない。
「ねぇ、大丈夫?体調が悪いんだったらもう帰った方がいいよ。三和さんに言って送ってもらえばいいし」
「………………それ、いいかも」
「え?」
ボソッと呟いた言葉が聞き取れず、聞き返した私を無視して橘修二がスタジオを走って出て行った。
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