第1章

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 私はといえば、腕組みをして机の上に置かれているアートフラワーのブーケを見つめた。  おもむろに携帯電話を取り出し、ベストポジションと思われる角度からブーケの写真を撮る。  それを親友にメールで送ってみたら、返信はすぐに来た。 【沼の底。あるいはブラックホール】  むっ。何だ、この単語の羅列は。  いや、そうだな。  そもそも面倒くさがりな彼女に、メールでの返信に過剰な期待をすること自体が間違っていたな。  やはりここは電話するしかないだろう。 「ちょっと! 意味が分からないんだけど。ちゃんと私の送った写メ見てくれたの!?」 「見たわ。だから、沼の底かブラックホールのようねと率直な感想を述べたまでよ」  電話の向こうから至極冷静な声が返ってきた。 「両者の共通点が分からないんだけど!」 「分からないの? 困ったちゃんね。ところでそれ、ほんとうは何なの?」  ほんとうはって、どういうことだ。 「ブーケよ。見て分かるでしょ。貴也の誕生日プレゼントにあげようと思ったの」 「見て分からないから訊いたのよ。ブーケねぇ……。私は他の物にすることをお勧めするわ」
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