序章―絶望の始まり

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「古典科の新垣文(アラガキアヤ)と申します。百人一首大会で全国一位を取りましたわ。それ以外は特に古典に関することは……」 着物姿で立っている女性だ。黒く、かんざしで結っているさらさらな髪はどことなく上品さを醸し出していた。 「身長は158、あの……体重は言った方がよろしいでしょうか?「言わんでいい」でしたら秘密で。」 まだ言いたいことがあるのか座らずに俯いている。 「源氏物語、枕草子に興味がある人は私のところに来てください。い、以上。」 そう言い残して着席した。顔は真っ赤で、この状況だけ見たらどんな嫌がらせを受けたんだと迷わず聞きに行っただろう。恥ずかしがるぐらいならやめればよかったのに。 「代数学の常数和真(ツネカズカズマ)。……です。代数関係はフェルマーの最終定理という問題の一部を解きました。」 次に立ったのは几帳面そうな男子。制服であろう服をネクタイまできっちりと絞め、立っている今でも気を付けの姿勢でいる。 「プログラムとかも一応出来ます。この船にパソコンがないから出来ないけどゲームとかよく作ってます。」 プログラマーか。正直、アナログの人間だから時代の波に付いていけるのは羨ましいと思う。
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