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「間に合わなかったんだよ。」
首もとに刃を押し付けられながらも、変わらず喋る弦子。
「わかってます。
逃げる判断も理解してます。
だから開けて。
私は冷静です。」
「冷静ならっ!諦めてくださいっ!」
毛布をはがしながら叫ぶミカオ。
「それ以上動いたら本当に切るよっ!」
その声にまた止まるミカオ。
「それでも諦めないと決めたから。だから降ります。」
「やめと」「ワァァァっ!!」超至近距離からの絞られた雄叫びに外側へと膨らむドア。
「っ!!」
その余波を浴び、身悶える弦子。
「ごめんなさい。さようなら。」
がちゃり。
車体を蹴り、飛び降りていく小鳥に必死に手を伸ばすが、もう、届かない。
ギィィィィィィァァァァァ!!
ドリフト気味に急停車するトレーラー。
後ろを振り向かず、走り出す小鳥。
「待てぇぇぇっ!!
せめてこれ持ってけぇぇぇーーー!!」
その、自らを思いやる声に、走り出した足が止まる。振り返る。
弦子がトレーラーから降り、貨物車を開けて、何かを取り出そうとしている。
その手にはサブマシンガン。
それも二丁。
一瞬迷いながらも、少し恥ずかしそうにトレーラーへと戻る小鳥。
「ったく。うちのお嬢様は随分とやんちゃになったもんだな。まだ耳がいてえんだけど?」
にやにやと笑う弦子。
「・・・ごめん。」
恥ずかしそうに俯いている。
「・・・いいさ。まだゾンビ共がくるには少し時間あるからな。」
「・・・ありがと。」
俯いたままの小鳥の頭をぽんぽんと撫でる弦子。
「・・・あ~あ、あんなにぽやぽやしてたお嬢様が本当にこんなに強くなるとはな~。
私、あんたのこと、妹みたいに思ってたんだぜ?」
はっとし、弦子の顔を見詰める小鳥。
「私も、弦子さんのこと・・・
おかん・・・じゃなかった。お姉ちゃんみたいに思ってたよ。」
「・・・ふん。
そんな奴とさ。
お別れっても淋しいじゃん?
だから、さよならなんて言わねえよ。
またな。
頑張れよ。」
「・・・うん。ありがとう。
弦子さん達も無事でいて。」
「任せとけって。
けつまくって逃げ出すのは得意だからな。
私達は大丈夫だ。」
「ふふっ。それじゃっ!またねっ!」
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