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また走り出す小鳥の背中をしばし見つめ、
何かを振り切るように威勢良く背中を向け、
トレーラーに向かって歩き出す弦子。
「・・・こ、怖かったっす。小鳥さん。」
ぼやきながら降りてくるミカオを見、にやりと笑う。
「だっらしねえなぁ~。キン○タマついてんのかっ!?」
頭をはたき、運転席へと飛び乗る。
「だからちゃんと伏せてくださいってっ!!」
助手席に飛び乗るミカオ。
「あれ?あの猫は?」
「んあ?花ちゃんか?
花ちゃんなら小鳥の胸に埋まってたぞ。
一緒に行きてえんだろ。」
またゆっくりと走り出すトレーラー。
小鳥はもう振り向かない。
ただ走る。
目に写るのは、暗く沈んだ無人の軍事基地のみ。
トレーラーがこじ開けた裏門を閉じ、閂をかける。
小さな基地故に、敷地も狭いがその分防備は万全であり、高さ五メートルほどの鉄条網が基地周囲を囲っている。
もっともゾンビの数の暴力を前にしては非常に心細いものであるが。
基地内部から施錠してまわり、屋上へと出る。
もうすでに肉眼でゾンビの姿が確認できる。
あとせいぜい三キロってとこかな。
もう今更間に合ってなんて思わないけど・・・
せめて帰ってきて・・・
あ、でも、ダメだ。
ここに帰ってきたら、ゆうすけさんも死んじゃうのか。
・・・最後に会いたいな。
でも会えたらゆうすけさん死んじゃうんだよな。
ぼんやりとそんなことを考えながらゾンビの波を見る。
微かに、聞こえてきた地響きに我を取り戻し、弦子にサブマシンガンと一緒に渡されたリュックを開く。
中には多量の弾丸と、携帯食料。
そして、一箱の近藤さん。
・・・なんでこんなものが?
取り出すと裏面に紙切れが貼ってあることに気づく。
「・・・なになに?奇跡的に出会えたとして・・・?、さすがに妊娠はヤバいだろう・・・?、ちゃんと避妊しろ・・・?
・・・大きなっ!お世話だっ!!」
箱を叩きつけそうになり、またしまう。
そっか。
こうなることまで、私が飛び出すことまで予測してたのか。
「ありがとう。」
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