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ひたすらに真っ直ぐに走り、その胸へと飛び込む。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~。」
子供のように、泣きじゃくる。
ォォォォォォォォォォォォ
目前まで迫ったゾンビなど、気にも止めず、ただひたすらに泣きじゃくる。
「た、だいま・・・。」
そう発した声はしゃがれ、よく見れば衣服はボロボロであり、未だ癒えぬおびただしい傷に全身が覆われている。
「・・・お帰りなさい。」
たったこれだけの言葉を口にすること、どれだけ望んだことか。
ォォォォォォォォォォォォ
もう、ゾンビの波は鉄条網の向こう側まで押し寄せている。
「・・・君のところに帰る・・・
それだけしか、覚えてないんだ・・・。」
見上げたその顔は、片目は黒く焼けただれ、頬肉は抉れて歯肉が見え、まるでゾンビのよう。
「・・・君の、名は?」
「・・・小鳥。大丈夫。私が忘れない。」
全てを失ってなお、帰ってきた彼から離れ、立ち上がる。
「・・・もう戦えないんだ。
左・・・動かない。」
左足は半ばから千切れ、左手は糸が切れたように力なく垂れ下がっている。
「・・・大丈夫。一緒だから。」
パララララパララララ。
呟きながら撃ち始める小鳥。
本来はぶれないように、動かさないはずの銃そのものを振り回し、鉄条網を越えてきたゾンビを一匹一発で仕留めていく。
連射に合わせて動かすそのさまは、まるで両手を広げて羽ばたいているように見え、
「・・・天使?」
力なく横たわりながら、つぶやくゆうすけだったもの。
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