希望と絶望。絶望と希望。

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家牛単体一頭だったらなんとかなったかもしれない。 雄叫びを雄叫びで相殺し、サブマシンガンを撃ち込む。 おそらくできたであろう。 だが今こうして見えるだけで7、8頭はいる。 探知内には数十頭。 それだけではない。 ゾンビは数え切れないほど。 その中には一際強そうなゾンビもちらほら混ざっている。 逃げ切れない。 生き残れない。 仮に車があったとしても同じことだ。 あの家牛がいる限り、逃げ切れない。 それでも小鳥は撃ち続ける。 どんどん狭まってくる、ゾンビの包囲網。 おびただしい数の屍を乗り越え、包囲は狭まっていく。 サブマシンガンは過度な酷使により、熱を持ち、それを持つ手は、焼け焦げた臭いを漂わせ始めた。 それでもなお、撃ち続ける。 ボオオオオオオオオオオ!! ふいに背後から聞こえた、まだ耳慣れぬ重低音に驚く。 ドガァァァァっ! 裏門のゲートを突き破り、つっこんでくるトレーラー。 ブモオオオオオオオオ!! そこへ一斉に放たれる雄叫び。 雄叫びと雄叫びが重なり合い、威力を増し、つっこんできたトレーラーが倒される。 爆発したように内側から跳ね上げられる、運転席側ドア。 「小鳥といいっ!無駄デカ牛といいっ!! うるっせえんだよぉぉぉぉっ!!!」 運転席ドアから這い上がり、アサルトライフルを撃ち始める弦子の姿に、腹立たしくもあり、うれしくもある。 「バカっ!!なんで戻ってきたのよっ!!」 「バカが戻って、バカが帰ってきたからっ!!バカ二人が戻ってきただけだろうがっ!!バカっ!!」 「バカバカ言うなぁっ!バカぁっ!!」 「バカ言う奴がバカだろうがっ!!バカっ!!」 互いに、流す涙は、嬉し涙。 己のこれからの運命を熟知してなお、再び会えた、再会の喜びに流す涙。 「ちょっとぉ!そこに立ったまま喧嘩してないでくださいっすよ!」 弦子の股の間から顔を覗かせるミカオ。 外の状況を一瞥し、「お疲れさまでした。」またトレーラー内に戻りそうになるところを弦子に引っ張り出される。 「・・・これで四人そろったっすね。」 諦めたように笑うミカオ。 「ははっ、あのバカ、帰ってくるとは思わなかったけどな。」
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