希望と絶望。絶望と希望。

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「とりあえず中に入るぞっ!屋上だっ!」 弦子の一声に、動き出す三人。 「お帰りなさいっす。」 右手を持ち、肩を貸すミカオに対し、不思議そうに見入るゆうすけ。 「ごめんね。もう、何も覚えてないみたいなの。」 一瞬意味がわからず、意味が飲み込め、絶句するミカオ。 「まっ、いいじゃねえの。帰ってきたんならさ。 逝くときゃみんな一緒だろ?」 意味を飲み込み、それでも軽口を叩く弦子に自然と笑いが浮かぶ。 両肩を支えられ、引きずられながら、涙を流すゆうすけ。 本人にも理解できていない涙。 在りし日のゆうすけならば、帰るべきところに帰れた、喜びの涙と認識するであろうが、 今の彼にはその記憶さえ残っていない。 それでも思い出の残り火が、思いの残滓が、涙を流させるのだ。 ばぁん! 弦子に蹴り開けられた扉をくぐり、屋上へと出る。 「へっへっへ。ちょうど顔面狙いやすいんじゃねえ? ほれ、そっちもう保たねえだろ。これ使え。」 巨大なリュックに突き刺してあったアサルトライフルを小鳥に手渡す。 その隣にはゆうすけを横たえ、代わりに軽機関銃を抱えたミカオの姿。 皆素人なのだ、三人三様に構え、一斉に撃ち出す。 弾丸を顔面に受け、もがく家牛たち。 「まさかこんなでけえのいるとは思ってなかったけど、これなら殺れるな。 まぁ、倒せたところで、退路なんぞねえけどなっ!」 「気をつけてっ!雄叫びがくるっ!」 ブモオオオオオオオオ!! 直撃を受け、吹き飛ばされる弦子。 かろうじてかわしたミカオがすぐに助けに行く。 攻撃力に反して、防御力が無さ過ぎるのだ。追い討ちをくらい、弦子をかばい、呻き声を上げるミカオ。 さらなる追撃を横から放たれた小鳥の雄叫びが相殺する。 その小鳥へ真横から放たれた雄叫びは、彼女を吹き飛ばし、弦子たちの元へと放り出す。 いつの間にか屋上を囲うようにずらりと並んだ家牛の顔。 「あは、あはは。 こりゃあかんわ。」 苦笑いを浮かべる弦子。 その肩に手を置き、立ち上がるミカオ。 「ちょっと耐えててください。 やれるだけ、やってみます。」
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