希望と絶望。絶望と希望。

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・・・なんでこの人たちは、戦うんだろう? なんで僕はこの人たちの所に帰ってきたのだろう? 傷つき、倒れていく見知らぬ人々を見ながら呟くゆうすけ。 なんでこの人たちは諦めないのだろう。 なんでこの人たちはいつも僕の前に立つのだろう。 混濁した意識の中で、必死で考える。 彼自身は知るよしもない。 彼自身が見せた背中が、彼らから諦めを奪ったことを。 彼自身が失ったものを、彼らが必死で守っていることを、彼はわからない。 生きるということの、尊さを。 足掻くということの、儚さを。 彼が体現せしめてきたからこそ、 彼らは諦めずに、足掻き続ける。 それは彼らが彼に、生きる力をまた返しているようでもあり、守っているようでもある。 ずらりと並んだ家牛五匹からの一斉の雄叫びを。 口から、喉から鮮血を吹き出させ、叫び続ける小鳥の雄叫びが。 凌駕し、正面の二匹を打ち砕く。六匹。七匹。 同時に、エビぞりに鮮血をぶちまけ、踊るように倒れ伏す小鳥。 ・・・なんで僕はここに帰ってきたんだ。 なんでなんでなんで・・・ 共に戦うためじゃないのか? 共に生きるためじゃないのか? 共に笑い、共に泣いた。そんな日々を過ごした仲間じゃないのか? そうじゃなきゃ。 こんなに心が震えない。 力を振り絞ろうとし、左手を動かそうとし、まるで動かず、右手右足だけで立ち上がる。 つっかえぼうを失ったように、また倒れ伏す。 限界を幾度も越えてここまできた。だから今、こうしてウゴケナイ。 だけど、今、ウゴカナキャ。 モウイノチモウシナワレテイッテイルノニ。 ボクに何ができる? イトシイ人を守れなかった、切なさを、 仲間の背中という、心強さが救ってくれた。 イトシサもセツナサもココロヅヨサも。 いつも感じていた。 だから今はあなたに届けたい。 幾度もアヤマチを重ねてきたから。 オソレナイで伝えたい。 今、ススムツヨサを。 ナミダヲミセナイデミツメテいたい。 それでも、身体は、動かない。
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