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「あっ!」
そこにいたのは、真っ黒なフード付きの長いマントを着た人でした。
背は私より少し高いくらいです。
「あの~…」
シュゼットが声をかけると、その背中はびくんと波打ち、立ち止まったかと思うとゆっくりと振り向きました。
「きゃっ!」
シュゼットは声を上げ決まり悪そうに俯きました。
私は何も言えずにただ立ち尽くすだけでした。
なぜなら、フードからのぞくその顔は人間でもうさぎでもない、気味の悪いとかげの顔だったのですから。
「この森にはふだん人がいないのに…
しかも、子供にみつかるとはな…」
とかげは苦笑してそう嘆きました。
見れば見るほど、気味の悪い顔です。
ですが、そこで私はあることに気付いたのです。
「あ、あの……もしかして…あなたはチクタクの修理屋さんですか?」
「そうだ。僕はチクタクの修理屋だ。」
その返答に、シュゼットは驚いた様子で顔を上げました。
「じ、実は、私達…チクタクを壊してしまって……
それで……」
「……わかった。修理すれば良いんだな?
チクタクはどこだ?」
「あ、は、はいっ!」
シュゼットは、内ポケットから壊れた時計を取り出し、修理屋さんの前に差し出しました。
修理屋さんの手は、皮膚はとかげのものでしたが、形はまるで人間のようでした。
「ほう。針は取れても中の機械はちゃんと動いてるみたいだな。」
壊れた時計を修理屋さんはあちこちから眺め、そして、マントを脱いで木陰に座り込みました。
下ろした袋の中からいろいろな道具を取り出して、修理屋さんはチクタクの修理を始めました。
ただ針をつけるだけだと思ってましたが、修理屋さんは慣れた手付きで時計を分解し、ねじを締めたり緩めたり、小さなこてのようなものを熱して部品をくっつけたり……
私達はその様子をずっと見ていたのですが、気が付けば、あたりは薄暗くなりはじめていました。
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