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奇跡
「きゃあっ!」
何が起きたのかわかりませんでしたが、私は後ろに倒れ、尻餅を着いていました。
「な、なんてことだ!」
声の方を見ると、見知らぬ男性が私と同じような態勢で座っていました。
その人はフードの着いた長いマントを着ています。
「あ、ありがとう!!本当にありがとう!」
私は突然その人に抱き締められました。
「も、もしや…あなたはチクタクの修理屋さんなのですか?」
「そうだよ!元の姿に戻れるなんて、考えたこともなかった。
なんて言ったら良いのかわからないけど…とにかく、心の底から感謝してるよ!」
そう話した修理屋さんの緑色の瞳は潤んで、きらきらと輝いていました。
(なんて綺麗な瞳……)
「シュザンヌ、大丈夫!?」
「え、ええ、なんともないわ。」
今日はなんと幸せな日なのでしょう。
私達が無事に成長出来ただけでなく、修理屋さんまでが元の姿に戻れたのですから。
*
「そんなことが!?」
クリストファーには町に服を買いにいってもらい、その間に私達は修理屋さんの事情を聞かせてもらいました。
「家族のことを想うと、今でも胸が痛むよ……」
本当はチャールズという名前だった修理屋さんは、悲しそうにそう呟きました。
チャールズも元はといえば、チクタクの音に興味を持ったことが悲劇の始まりだったのです。
夜中に家を抜け出してチクタクの元を探ろうとしていた彼は、そこでおかしな人物をみつけたのです。
フード付きの長いマントを羽織ったその人物は、人間の大人くらいの大きさの操り人形でした。
しかも、糸は付いてないのに、人形は一人で歩き、それどころか人間の言葉を話したのです。
「なんで、子供がこんな時間に……」
好奇心の強いチャールズは、少し怖さを感じながらも操り人形と話をしました。
操り人形は、チクタクの修理屋をしていて、チクタクの音の元がどこなのかも知ってると言いました。
チャールズは大喜びで操り人形に着いて行きました。
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