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「……今日もまただめでございましたね。」
「もぅっ!そんな顔しないの!
大丈夫!世界はまだまだ広いんだから!」
うなだれるクリストファーの背中を、シュゼットは景気良く叩いて、にっこりと微笑みました。
それにつられて、クリストファーも懸命に微笑みます。
私、シュザンヌとシュゼットは、双子の姉妹です。
年齢は八歳……ということにしておきましょう。
それは嘘ではありませんが、本当とも少し違うのです……
私達とお供のクリストファーは、ある者を探して、街から街へと、それはそれは長い旅を続けています。
事の発端は、妹シュゼットのちょっとした好奇心でした。
その時の私達は、まさかこんなことになるなんて、思ってもみなかったのです。
***
「あぁ、空気がおいしい…」
私達は、毎年、馬車で一週間程かかる別荘に避暑に行きます。
別荘の近くには、「チクタクの森」という少し不思議な森がありました。
見た目には、特別変わった所はありませんが、その森ではどこからともなく、チクタク…チクタクと言う小さな時計の音が聞こえるのです。
ですが、その音がどこから聞こえてくるのかは誰も知らず、しかも、その音は大きくなると聞こえなくなる…つまり、子供にしか聞こえない摩訶不思議な音なのです。
お父様やおじいさまも子供の頃にその音を聞いたとおっしゃいました。
もちろん、私達にもはっきりと聞こえていますが、お父様のお話によると、ちょうど今の私達くらいの年から聞こえなくなったとのこと。
ですから、シュゼットは、今年こそはなんとしても音の在りかをみつけるんだと、それはたいそう張り切っていたのです。
「良いこと?シュザンヌ……
私達は双子なのよ。
つまり、それは、お父様やおじいさまの二倍良く聞こえるってことなの。
だから、私達には絶対にみつけられるわ!」
双子だから二倍というのはどうなんでしょう?
でも、そういう話をする時のシュゼットの瞳はきらきらと輝いてまるで青い宝石のようでした。
彼女の自信に満ちた言葉を聞いていると、本当になんでも出来るように思えて来るから不思議です。
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