第2章

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我が高校、百目鬼高等学校に転校生がやってきた。 「どうもー!初めまして!モモノ ユウです!」 無邪気に微笑む姿に好意的に受け取る者の大半は少ない。 「百の木がある野原で栢野、遊びほうけるで、遊。みんな―。ユウって親しく呼んでね」 満面の笑顔で答える姿に全ての人間はただ見つめている。 「あれれ?」 首を捻るユウに、僕らはただこのクラスの支配者である学級委員を横目で見る。 「どうも、初めまして。よろしくね」 眼鏡をかけたその学級委員に、栢野 遊は満面の笑顔を返す。 「うん!よろしく。神崎委員長」 楽しそうに笑うと教師に席に付くよう言われ開いている席に座る。 どうやらターゲットにされたらしい。 全ての生徒は憐みの瞳で見つめる。 そして同時に僕らはターゲットから離れたことに安堵する。 今日一日転校生を観察してみた。 栢野の容姿はよくある日本人の黒目と呼ばれる瞳と、色あせた茶色の髪。 そして黄色い肌は健康的な肌色になっている。 顔は整っているが、イケメンと言われるほどではなく、普段から笑顔である。 授業態度はあまりよくない。 勉強は普通ぐらいの、学力。 ただ授業中は何か遊びを行っては教師に見つからないよう注意を行う。 そして休み時間も同じ。 その作業を続行する。 そして昼休みは楽しげにお弁当を食べる。 誰かの手作り弁当なのかおいしそうに食べる。 もちろん、一人で。 最初は周りのクラスメイトを誘っていたが全ての人間に断られ、しょぼくれた感じでお弁当を開けた。 だがその中身を見ると笑顔へと変えて元気いっぱいに食べ始める。 そしてお弁当が食べ終わると早速と言わんばかりにめげずに生徒に声をかける。 一緒に外で遊ぼう。 しかし誰もその誘いには乗らない。 もちろん、委員長の彼もだ。 今日はまだ、大人しいと言える。 明日からの地獄を考えると憐みを浮かべるが、自分たちがターゲットにならないことが一番いいと思えることだった。
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