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常人ならば驚き腰を抜かすであろうが、剣士はじっと笑い声に聞き入っている。
笑い声が身にこびりつくような不快感を覚える。この笑い声を発しているのは只者ではない――
刹那、かっと目が見開かれたと思ったその瞬間、風のうなる音とともに、ばきばきという音もすれば。数本の竹が他の竹に寄りかかりながらずるずるとずり落ちて、またほかの竹に寄りかかってから、ばたりと倒れた。
いつの間にか、女の笑い声が消えている。
剣士は大剣を構えていた。
背中から取り上げながら大剣を振るい、そこで竹がぶった斬られた、というわけだったが。目的は竹をぶった斬ることではないのは言うまでもない。
これに香澄は驚かず、涼しい顔をして微笑んでいる。
大剣をかまえる剣士のやや向こう側に、女がたたずんでいる。
その女は、女として熟れた妖艶さを醸し出していた。濃い紫のい衣に身を包み、妖艶な笑みで剣士を見つめていた。
「やるのう、源龍(げんりゅう)」
「お前こそな、第六天女(だいろくてんにょ)よ」
ふたりは香澄をよそに、視線を合わせたまま動かなかった。
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