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「強くはなりたい。しかし、屍魔(しま)にはなりたくない」
「香澄を見ても、そう言うか。すくいのない男……」
第六天女は冷たい笑みを浮かべると、竹を蹴って大きく跳躍した。その着地地点を見定めて源龍は突っ込もうとするが、はっとして足を止めた。
すると、突然地面から何かが飛び出して。咄嗟に大剣を振るえば、なにかを叩き潰す鈍い感触。
弾かれてどさりと倒れたそれを見れば、それは、頭のつぶれた人間のようなものだった。
すでに着地している第六天女はくすりと笑う。
「まあ、わらわもそなたが欲しい。しかし無理強いもなるまいし。ならば、気持ちが改まるのを辛抱強く待つとしようかの」
そう言うと、第六天女の姿がおぼろげになったかと思うと。まるで風に吹かれる霧のように、消えていなくなった。
しかし、香澄はいた。
源龍はおのれが頭をつぶした人間のようなものを見据えれば。
突如として、地面から幾多ものなにかが飛び出してきた。
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