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朝日が昇る。
その恵みの光りに照らされ、きらりと光る剣と刀。
自分に向けて構えられる剣や刀の跳ね返した光りを受け、少女はまぶしそうに眉をひそめる。
「龍お姉さん」
と自分と背中を合わせる女を呼んだ。
女、龍玉(りゅうぎょく)はふっと笑って少女に微笑み返す。
小柄ながら紅い服をまとい、清純可憐で人形のよう可愛らしい少女は頬をぷっと膨らませ、自分たちに向けられた剣や刀を、碧い目で睨んでいる。
碧い目。そう、少女ははるか西方の異民族の血を引いているという。
(おやおや)
そんな怖い顔をしちゃ、せっかくの可愛らしい顔がだいなしだよ。と、くすっと龍玉は微笑む。
「笑ってる場合じゃないと思うの」
「まあまあ。いいじゃないの」
「よくない!」
ぷっと膨れた頬を弾けさせるように、少女、虎碧(こへき)は叫んで腰に帯びている剣を抜いて構え。龍玉も続いて剣を構える。
(もう)
少し後ろを向いて、きっと龍玉を睨む。
ほっそりとして柳の枝のような柔らかさを感じさせる身体に蒼い服を身にまとい、服からのぞく肌は色白く、紅を塗られた赤い唇が艶やかしい。また口元のほくろがいっそう艶やかさを引き立てて。つややかな黒髪がそよ風にふかれてゆるやかに揺れる。
龍玉の口元のほくろのところに、虎碧の頭のてっぺんがくる。
剣を構えるとき、紅蒼二色の服が剣風になびいてゆらりと揺れた。それは風に優しくなでられて舞うように揺れる花のように。
曙光まぶしい草原で、ふたりが背中を合わせて剣を構える様は草原に生ける二輪の花のようで、まるで一服の名画を観ているようでもあった。
それに対し、草原に突然生えたような枯れ草のようなふたりを囲む男どもは、嬉しそうに笑っている。ざっと十人ほど。
男どもは皆粗末な身なりなくせに、目だけはやけに爛々と光って血走っている。それはまるで、獲物を狙う獣のように。
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