龍玉と虎碧

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 その中で、丸い陰陽の太極図があしらわれた黄色い道士服の男だけが、異彩を放っていた。他の男どものように目を血走らせず、眼光鋭く、ふたりを見据えている。  手に剣を握って。 「この無間道士(むげんどうし)さまの迦楼羅幇(かるらほう)に仇なすとは、恐れを知らぬことよ」  冷笑を含めた物言い。虎碧はその冷気に飲まれまいと、気を引き締め剣を握るてに力を込める。それに対し空気を読まないのか読めないのか、それとも読んだからなのか、龍玉の減らず口が無間道士に飛ばされる。 「迦楼羅? 陰陽の太極図をかかげた道士さまが、仏の教えに出る天龍八部衆のうちのひとつを幇(組織)の名前にするなんて、ごちゃ混ぜもいいところね」 「龍お姉さん、無間道士の無間(むげん)も仏の教えに出る無間地獄からよ」 「おやそうだったね、ほんと節操のないこと。おまけに人も殺そうとして、名前を不戒真人さまに変えたらどうかしら」 「それが出来るくらいなら、こうしてあたしたちと剣を突きあわせていないわよ」  天真爛漫な龍玉に、すかさず冷静に突っ込む虎碧。結局虎碧も空気を読んでなさそうで、そのあうんの呼吸の良さに、男どもは殺意をみなぎらせながら嘲笑を浴びせる。
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