龍玉と虎碧

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 さらに驚きどうにか右手に逃れたものの、服の背中には右肩から左下へときれいに切れ目が入ってしまった。 「おのれ!」  無間道士は服に切れ目を入れられたことにかっとなって、龍玉へ激しい刺突を繰り出す。しかし、龍玉は難なくかわしてゆき、かすりもしない。それどころかおどけた笑みさえ浮かべ、ひらひらと舞いでも舞うように、軽やかに身体を動かしている。 「やれるもんならやってみな」  と、あきらかに無間道士を挑発していた。  それを尻目に虎碧はこの隙に、襲い来る雑魚どもを迎え撃ち、片っ端から片付けてゆく。  幼くあどけなさの残る見た目と裏腹に、虎碧の技量高く、雑魚どもの剣や刀などかすりもせず、ひとりまたひとりと斬られていった。  斬る、といっても腕や肩、足のふくらはぎなど、命に関わる急所ははずしている。虎碧は無駄な殺生は好まなかった。  その剣がひらめくたび、雑魚どもの手から剣や刀が面白いようにぽろぽろと落ちてゆく。 (こ、こいつら、強いではないか!)  自らの剣をかわされながら、雑魚どもの有様を見て無間道士は舌を巻く。見た目で侮っていたものの、これはとんでもないやつらが来たものだ、と冷や汗のにじむのを禁じえなかった。  雑魚どもは、虎碧に得物を落とされ、またその剣技に恐れをなし、 「逃げろ、逃げろ!」  とすたこらさっさと尻尾を巻いて逃げてゆく。むしろそのあっけない様に、虎碧自身が呆気に取られてしまった。 (この人たち、こんなにも弱かったの)  あきれながら剣をたれ下げるように持って、その背中を見送る。 「弱いから、もっと弱い人たちをいじめていたのね……」  と、ぽそっとつぶやく。
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