龍玉と虎碧

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「こんなやつ、死んだほうがいいんだよ。でなきゃ、また悪さをする」  それが無間道士が最後に聞いた言葉だった。剣が抜かれると、その黄色い道士服をまとった身体はどおっと崩れ落ちるように倒れ、ぴくりとも動かない。  虎碧の碧い目は、哀れそうにその屍を見つめ、剣を鞘におさめ我知らず手を合わす。  ふう、とため息をつき、龍玉はその様子を見守っていた。無間道士の力尽きてから、氷のような冷たさは影を潜めて、変わって。 「優しいね、虎碧は」  剣を鞘におさめ、続いて手を合わす。まあこれくらいはしてやろうか、というくらいの慈悲は少しでも持っていたようだ。  それから合わせていた手を離し、片手を腰に、片手はぶらぶらと遊ばせて。空を見上げる。空には太陽が恵みの光りを降りそそいで、青い空には白い雲が群れをなして泳いでいる。 「こうでもしなきゃ、いけないってことさ。でも手を汚すのは、あたしがやるから、それで堪忍しておくれ」  そう言うとおもむろに、無間道士を討った証にと龍玉はその手に握られていた剣を取りあげ、虎碧に背中を向け歩き出す。  手を合わせ終え、虎碧も龍玉に続いて歩き出す。後ろも振り返らない。  草原にただひとつ残された無間道士のなきがらは、風に遊ぶ草原の草たちにもてあそばれるように、ついばまれていた。
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