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龍玉はそのみぞおちに思いっきり蹴りを食らわせた。これで気絶しておとなしくなる、と思ったが――
「おああ!」
と悲鳴をあげながらみぞおちに決まった龍玉の足を両手でつかむではないか。しかもその形相のなんとまがまがしいことか。
「な、なんで!」
驚いた次の瞬間、村長は龍玉の足を持ち上げて歯をむき出しにした大口で噛みつこうとする。
その手の力は強く、足を引き離そうとするもしっかとつかまれて離せず。思わずこけてし背中を地に打ち付けてしまった。
「ちょ、ちょっと村長!」
呼びかけに応じるでもない、村長はすごい形相で足にかみつこうとする。その顔面に、虎碧が蹴りを食らわして。これによろけてようやくに手から力が抜けて龍玉は危機を脱して咄嗟に起き上がり。
ふたりはすばやく背中を合わせて周囲を見渡した。
気が付けば、狂乱した村人に囲まれてしまっている。
「これは、もう、人じゃない……」
虎碧はつぶやき、龍玉は頷く。
なにがどうしてこんなことになったのか。ふたりは動揺を禁じ得なかった。
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