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これはどういうことであろうか。龍玉がしとめたはずの無間道士が蘇ってふたりの前に立ちはだかっているのだ。
駆けて屍魔から逃げていた龍玉と虎碧は思わず足を止めて、まさに鬼(き)を見る思いで無間道士を見やっていた。
「そんな馬鹿な……」
龍玉、ぽそりとうめきながらつぶやく。無間道士は確かに自分がしとめた。それなのに、どうして……。
「あ……」
後ろからは屍魔たちが迫り。虎碧はやむなく龍玉と背中を合わせて屍魔にそなえて剣をかまえる。
しかし、屍魔たちは虎碧を警戒したのか、追う足をぴたりと止めてしまった。
(え、どうして?)
と、不思議に思ったそのとき――
しゃあッ! と不気味な、獣のような叫び声がしたと思えば、無間道士は目をむき大口を開けもろ手を挙げて龍玉に襲い掛かった。
「来るか!」
龍玉はぎりりと歯を食いしばり剣を握りしめて、無間道士の顔面めがけて鋭い刺突を繰り出す。
剣先が顔面を突き刺そうとし、その直後に手ごたえがあった。と思ったが、剣先が顔面を突き刺そうとするその直前、無間道士はさっと目にもとまらぬ早さで後ろへしりぞき。
まるで猿(ましら)のようにくるりと後ろに宙返りをして、四つん這いになって着地し、
「しゃあッ!」
という、獣じみた不気味な叫びをあげて龍玉を睨み据えた。
「な、なんだこいつ、気持ち悪い……」
龍玉も後ろへさがって剣をかまえなおして無間道士と対峙するが、不気味さは禁じ得なかった。
死んだはずの無間道士が生き返って、しかも猿のような動作をし人間の声とは思えぬ不気味な声をだし。
まるでまったく別の、何かの獣になってしまったようだった。
虎碧は屍魔にそなえて剣をかまえるも、屍魔たちは一向に動く気配がない。しかし油断は出来ぬ。そのため、ともに動かずに睨み合ったままだった。
無間道士は四つん這いのかっこうで、右へ左へゆらゆらと揺れながら龍玉に襲い掛かる隙をうかがっている。
龍玉も同じように、無間道士に仕掛ける隙をうかがい、双方の睨み合いが続く。
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