剣士

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「ああ、それは……」  もごもごろ口ごもりながら代金を求める親父の顔面に、拳がぶつけられて。親父は鼻柱をへし折られて鼻血をまき散らしながら、どおと尻もちをついた。 「ひゃっはっは」  五人は親父をせせら笑いながら店を出て、さっきと同じように肩で風を切って町を練り歩く。  酒を飲み、いい具合にほろ酔い気分になって心地が良い。  町の人々は恐れおののいて道を開けて五人をやりすごすしかなかった。 「ん?」  斉涜怪が何かを見て、続いて零志頭無もそれを見る。  それは、一人の剣士であった。  ぼろい黒装束に身を包み、背は高く、顔の下半分を髭が覆い。その様は、荒野をさすらってきたことをあらわしているようだ。  なにより、五人の目を引いたのは、剣士の背中にかけられた大剣であった。  鞘はなく、抜身のままのその大剣は男の背丈と同じくらいの長さがあり。重さも相当ありそうだったが、剣士は軽々と担いでいるように見える。
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