一ヶ月

7/13
前へ
/82ページ
次へ
不意に気をソチラに向けた俺のスキを突いて、谷川は俺のをパンツに手を掛ける。 「何してっ!」 吃驚して腰を引き、谷川の手を叩きき払い、スボンを直す。 コンコンというノック音は、次第に大きくなり 今やドンドンである。 「ごめん下さい、辻という者ですが…」 と、いう声が聞こえる。 えっ…辻さん? 何で此処に 驚き、俺は咄嗟に谷川を突き飛ばし、ズボンのチャックを上げると玄関に向かった。 ドアを開けると、そこには辻さんの姿が 「勇雄さん、お迎えに来ました」 ニッコリ笑う辻さんの笑顔が怖い。 それに迎えって何だ… 「帰りましょう」 そう手を引かれ、外に連れ出される。 俺は、そのまま谷川のアパートを後にした。 「あの、辻さん?何で…?」 俺は、無言で歩く辻さんに話し掛ける。 後ろ姿を見ていると、怒っている気がした。 「何で?恋人の浮気は見過ごせないですからね」 刺々しい台詞が帰ってくる。 やっぱり怒っている様だ。 「浮気だなんてそんな積もりは… 後輩の家に遊びに行っただけで…」 俺は、歯切れの悪い言い訳をする。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

218人が本棚に入れています
本棚に追加