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「ぐはっ!」
俺の体を横に一閃する刀と共に、鈍い痛みが腹に走る。
体が傾き倒れ、俺は死亡フラグ回収と共に起床……しただろう。
開眼し、俺は違和感を拭うためにまた瞼を下ろした。
「やっべ、汗がすげぇわ」
寝ぼける頭で俺は袖で額の汗を拭い、夢を思い出す。
螢の迫力……パネェかった。
目を瞑ったまま夢の中で合った螢を思い出すだけで、鳥肌がたつほどだ。
殺気なんてのは、きっとああいうのを言うのだろう。
体が動かねぇ、死ぬのが分かる。圧倒的な威圧感。ゲームじゃ分からねぇもんを俺は体験しただろう。
ったく、寝る前に女の一人くらい出せって思ったけど……こういうのはやめてほしいよな。
「よし、続きするか」
再びゲームをしようと、俺は目を開いて起き上がる。
いつも、起き上がると壁にある螢のポスターと目が合うはずが……
「……やっぱりか、何処だよここ?」
障子。回りは襖があるが、それ以外はなんも無ぇ。
「…………」
これ、夢を夢として見るやつか?
胡蝶の夢っつーやつか?
そうか、まだ夢か。
「いやー、夢ん中なのに、すんげぇ空気うめーなーオイ」
俺は伸びをしながら、違和感を確認する。
まず、俺は何故か着物。
そして、俺は何故か髪が長い。
更に……天井から見張られてる。
「…………」
この場合、素無視の選択は間違いねぇだろう。
とにかく、寝る。寝なきゃ目が覚めねぇ。
俺は再び布団に入るが……天井が気になって仕方ない。
小さな穴から、俺を見てるもの。
気配が分かるもの。
「…………」
とりあえず、ひたすらその穴を見続けた。
目を逸らしてもくれねぇし、これは仕方ないよな?
だって、気になるもの。
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