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「あ、元気になったのか?」
目の前にいるのは恐らく、昨日運んだ狼。
治療中にわかったのはメスであることだ。
問いかけに答えるように尻尾が左右に揺れている。
「それはよかった。で、この方々は?
」
いや、はぐれた群れの仲間たちであることは予測がつくが大悟を取り囲んで一体どうしようというのか、この状況を見て思うのは襲われるということだが。
そんなことを考えていると一匹の狼が昨日の巨大猪の牙をくわえて持ってくると
大悟の足元に置いたと同時に狼たちが一斉に地面に伏せた。
「仲間を助けてもらったお礼かな?」
視線をいつの間にか大悟の隣に座っている狼に送る。
意思が伝わったのか尻尾の動きが大きくなった。
そっと頭に手を置き撫でると気持ち良さそうに目を細めた。
「お礼なんていいから朝飯にしよう」
昨日干していた肉を一塊とり、ちぎって焚き火の前であぶる。
ふと、視線を後ろにやると物欲しそうな目で大悟を見つめる狼たち。
「い、いるか?」
一番大きな塊を狼たちに差し出すと、奪い合うように持っていった。
「あはは、スゴいな。お前は食べなくていいのか?」
またしてもちゃっかり大悟の隣で伏せている昨日の雌狼に声をかけるも動かない。
「……こっちがいいのか?」
大悟が焚き火で焼いていた肉を更にちぎって差し出すと嬉しそうに尻尾を振りながら食べる。
その姿を見ながら大悟も食事を始めた。
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